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きつねをおがんだひとたち

きつねをおがんだ人たち

小川 未明

線上閱讀小川 未明《きつねをおがんだ人たち(きつねをおがんだひとたち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 2,266 字 · 5 頁

青空文庫

その子供が、中学へ上がるころのこと、道を歩いていると、荷車を引く、強そうな若者と出あいました。ふと顔をあわせると、いつか病院で、腕を切らなければ死ぬといわれた少年でした。若者もおどろいて、頭を下げ、

「いつぞやは、ありがとうございました。その後、おいなりさまに願をかけますと、うみが出まして、いまではこうして働けるようになりました。」と、いいました。

これを聞くと、やはり神はあるのだと、深く感ぜずにいられませんでした。これまで書いたのは、これから、私がこの少年の将来を語るに必要な、まえがきのようなものであります。

やがて、少年は学校を出て成人すると、にぎやかな都会にあこがれ、そこで暮らすようになりました。またぜいたくがしたくなり、千金を夢みて株などへ手を出すようになると、さすがに自分の力ばかりを信じられず、ひたすら神さまを頼ろうとするようになりました。

彼は、毎朝起きたときと、夜ねむるときには、かならずふるさとの方をむいて、頭を下げ、あのさびしい森の中の社をおがんだのです。そして、風の吹く日は、ゴウゴウと木の枝がさわぐありさまを想像し、雨のふる日は、おまいりするものもない、ぬれた社殿の屋根を目にえがきながら、どうぞ私を助けたまえとおがみました。