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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《さまよう町のさまよう家のさまよう人々(さまようまちのさまよういえのさまようひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,916 字 · 75 頁
こんな団体が十八あったからその地方を十八段と呼ぶに至ったので、各段には小銃なども用意し、盛んに掠奪をやったから、金持ちの良民はだんだんよそに引っ越してしまっていつしかその附近一帯が幇の勢力範囲となった。
幇匪の勢力が日に日に強大になってゆくので、時の巡撫は統領にこれが討伐を密命した。統領は約一千の兵を率いてその地方に出かけたが、何ぞ知らんこの統領も亦幇匪だったので、頭目顧三五子と会見の上これから先の発展拡張を相談し、折角の討伐が却って虎に翼を添えたような結果になってしまった。そこで統領と顧三五子との領域を定め、顧の匪等はそれから又遠くの地方にその手足を伸ばした。この幇には、一ヶ月以内に同じ県を二度犯さないという内規があるので、従ってその荒し廻る地方がだんだんと拡がって行った。
その後各地方からの訴えに由り省の役人が探偵を出して十八段地方に入り込ましてみたが、男は田野に耕し女は糸を紡ぎ、子供は水牛に乗って笛を吹き、老人は家に閑居して羨ましい程の太平の有様である。役人は案に相違し、こんな平和な村に盗匪はいる筈はないと言って引き上げたが、これは全く幇匪にばかされたのである。