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さまよえるユダヤじん
さまよえる猶太人
線上閱讀芥川 竜之介《さまよえる猶太人(さまよえるユダヤじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,846 字 · 14 頁
の肩を捕えて、ことさらに荒々しくこずきまわした。――「やがては、ゆるりと磔柱にかって、休まるる体じゃなど悪口し、あまつさえ手をあげて、打擲さえしたものでござる。」
すると、クリストは、静に頭をあげて、叱るようにヨセフを見た。彼が死んだ兄に似ていると思った眼で、厳にじっと見たのである。「行けと云うなら、行かぬでもないが、その代り、その方はわしの帰るまで、待って居れよ。」――クリストの眼を見ると共に、彼はこう云う語が、熱風よりもはげしく、刹那に彼の心へ焼けつくような気もちがした。クリストが、実際こう云ったかどうか、それは彼自身にも、はっきりわからない。が、ヨセフは、「この呪が心耳にとどまって、いても立っても居られぬような気に」なったのであろう。あげた手が自ら垂れ、心頭にあった憎しみが自ら消えると、彼は、子供を抱いたまま、思わず往来に跪いて、爪を剥がしているクリストの足に、恐る恐る唇をふれようとした。が、もう遅い。クリストは、兵卒たちに追い立てられて、すでに五六歩彼の戸口を離れている。ヨセフは、茫然として、ややともすると群集にまぎれようとする御主の紫の衣を見送った。