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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
線上閱讀佐藤 春夫《たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集(あじさい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 頁
――それでも、お前ところのお父さんも怪我をしたのじゃ。狸に喰附かれたんじゃろう。血みどろになって、二輪車へも乗らずに、二輪車を引いて坂を下りて行ったんじゃと。おれのうちのお父さんは皆見て居たんじゃぜ。……」
私は――子供の私は、息もつかずにこの怖ろしい心配な話を聞いていた。私のお父さんがどこを一たい狸に噛まれたのだろうと思った。それにしても本当にあそこに狸が出て私のお父さんが狸と取組んだりしたろうかと少し疑わないでもない。しかし本当に見たと言うのなら本当に相違ない。それにしてもお父さんはどうしているだろう。嘸、いたいだろう……そんなことを、私は何度も何度も心のなかで考えて、その日半日心配でならなかった。一度うちへ帰ってお父さんを見て来ようかとも考えた。けれども、朝、私が学校へ出て来る時に私のうちで、父は未だ起きてはいなかったようだったけれども、皆別だんふだんと変った顔はしていなかった。もしや、何でもないのに家へかえったら皆に笑われたり、叱られたりする。そんなことを私はさんざん苦にした。私はそのころから物ごとが苦になって仕方がない性分であった。私がそんなに苦にやんでいるにもかかわらず、私にその話をした登坂の子供は、さも面白い事のように、