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だいこん
だいこん
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《だいこん》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 153,732 字 · 303 頁
「このごろは誰も小説なんか読みません。とてもそれどころじゃない」
あたしは終戦の日から〈新日本史〉の執筆をはじめ、毎日、部屋にこもってゴシャゴシャ書きつけている。なぜ日本が敗けたか、とか、敗戦の真相とか、そんなもんじゃない。敗けたあとでわかった真相なんか、焦げつかしたシチュウのようなもので、なんの役にもたちはしない。敗けたということだけなら、〈英雄伝〉の壮大なスタイルにならって、〈流星の一瞬の光芒のうちに、すべては終ってしまった〉と書いておくだけでたくさんだ。
それについて思いだすのは二人の先輩のことだ。グリニャン伯爵のところへお嫁にいった、フランス一の美人のお嬢さんに、フランス一の利巧なママが、フランス一の華やかなルイ十四世代の宮廷生活を四半世紀のあいだパリからせっせと書き送った〈セヴィニェ夫人の手紙〉。それから三代つづいてパリで生れた生粋のパリジャンヌが、子供の頃のパリのさまざまな思い出を書いたドオデエ夫人の〈幼い頃の巴里〉。この二人の女のひとは、小説を書こうとか美しい文章を書こうとか、そんなつまらないことを考えていたわけじゃない。歴史家も小説家も見落していた細かいことを丹念にひろいあげ、眼に見えるように生きいきと書きのこしておいてくれた。