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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《ちくしょう谷(ちくしょうだに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 頁
また男の罪人のうち、当人の行状がよく、妻子があって希望すれば、村へ呼びよせることが許されてい、百余年のあいだに、そういう例が九回記録してあった。しかしそれらは妻だけの場合で、子供を伴れて来た例は一つもなかった。――村での労役は御用林の作業と、山道の整備とで、農耕は(高冷地のため殆んど不可能だったが)許されておらず、食糧は藩から給与されていた。米はなく、麦、稗、粟、もろこしなどの雑穀に、塩引の鮭、干鱈、煮干、そして乾した野菜などであるが、鮭や干鱈はたいてい木戸で取りあげてしまうようであった。
部落の日常生活については記録がない。労役の状態と、年一回の人数しらべと、死者の名と、殺傷、喧嘩、山ぬけなど、あった事件が書いてあるだけで、男女の数の対比も明らかではないし、――というのは、記録は流罪人だけに限られており、妻が許されて良人といっしょになっても、記録にはのせないからであるが、また子供が幾人生れ、その子がどう育てられるかということも、疾病に関することも記してはなかった。――さすが年代が下ってからは、家族の数や男女別の人数がしらべてある。だが、それさえも十年以前のしらべが最後で、それから三年、同じ計数が書かれただけで終っていた。