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とうげのちゃや

とうげの茶屋

小川 未明

線上閱讀小川 未明《とうげの茶屋(とうげのちゃや)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 6,035 字 · 12 頁

青空文庫

手を合わせました。

このとき、人のきたけはいがしました。

「このごろは、めっきり、早く日が暮れるのう。」

そういいながら入ったのは、年とった百姓でありました。

「いま、町のもどりかの。」と、おじいさんは、親しげに迎えました。

百姓は、おじいさんのそばへ寄って、腰を下ろしました。おじいさんのおし出す火鉢にあたって、昔風の太いきせるに火をつけました。

二人は、小学校時代からの友だちでありました。ほかにも仲のよかったものもあったが、早く死んだり、あるいは、この土地にいなくなったりして、この年となるまでつき合いをし、たがいに身の上話を打ち明けるのは、わずかこの二人ぐらいのものであります。

「一本つけるかの。」

「それを、たのしみに、町で飲みたいのを我慢してきたわい。」

これを聞くと、おじいさんは、炉の中に松葉をたき、上から釣るした鉄びんをわかしにかかりながら、

「来年から、この道をバスが通るというこった。それで、いまのうち、はやく前へ停留場の着くよう運動をしろと、さっき助役さんがいらしていわしたが、おまえも知るとおり、おらも、だんだん年をとるだし、いっそせがれの許へいったほうがいいかとも考えてな。