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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
線上閱讀大阪 圭吉《とむらい機関車(とむらいきかんしゃ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 頁
もっとも時たま院長がここから裏の雑木林へ朝の散歩に出かけたりすることがあるので、ふと思いついた看護人の鳥山宇吉は、それでは院長が出られたのかなと思いながら取りあえず木戸の方へ歩いて行った。けれどもたとえ院長が散歩に出るにしても大事な木戸を開放しにすると云うことは、少しの間といえども決して許されないことだ。鳥山宇吉はそう思いながら木戸まで来ると、立上って不安そうに塀の外を見廻した。
誰もいない。
雑木の梢で姿の見えない小鳥共が、ピーチクピーチク朝の唄を唄っていた。すると宇吉はふと奇妙なことに気がついて思わず啣えた楊枝を手にとった。
いつも朝早くから唄いつづける「歌姫」のソプラノが、そう云えば、今朝は少しも聞えない。「歌姫」のソプラノどころか、あれほど執拗でこうるさい「トントン」さえも、どうしたものか聞えない。ガランとした病舎はひどく神妙に静まり返って、この明るさの中に死んだように不気味な静寂を湛えていた。全く静かだ。その静けさの中から、低く遅くだが追々速く高く、宇吉の心臓の脈打つ音だけが聞えて来た。
「……これァ……どえらい事になったゾ!」
思わず呟いた鳥山宇吉は、みるみる顔色を青くしながらそのまま丸くなって病舎の方へ駈け込んで行った。