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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

線上閱讀大阪 圭吉《とむらい機関車(とむらいきかんしゃ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 頁

青空文庫

この時東屋氏が、怺えかねたように傍らから口を入れた。

「失礼ですが、御主人は、なぜ夜中になぞ帆走をなさるのですか?」

すると夫人は困ったように、

「……あれが、あの人の、道楽なのでございます」

そう云って淋しそうに、笑うとも泣くとも判らぬ表情をした。

「いつも御主人は、お独りで帆走されるんですか?」

私が訊ねた。

「はい……でも、時々家人を誘いますので、そのような時には、下男に供をさせることにいたしておりました。でも――」

「昨晩は?」

「昨晩は一人でございましたが――」

恰度この時、二人の紳士が室内へはいって来た。私達は満たされぬ思いでひとまず口を噤んだ。深谷夫人は立上って、二人の紳士を私達へ紹介した。

「こちらが、主人の友人で黒塚様と被仰います。こちらが、私の実弟で洋吉と申します。どうぞ宜しく」

キャプテン深谷氏の友人黒塚と云うのは、見たところまだ四十を五つと越していない、かっぷくのいい隆としたアメリカ型の紳士で、夫人の実弟洋吉と云う方は、黒塚氏に較べて体も小さく年も若く色の白い快活そうな青年だ。二人共同じような純白の三つ揃いを着て、どことなく洒脱な風貌の持主だった。