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どぶろくげんそう
どぶろく幻想
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《どぶろく幻想(どぶろくげんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,452 字 · 21 頁
千代乃の淋しい葬式に対してだって、二通りの眼があった。憎悪や軽蔑の念で見る眼と、愛情や同情の念で見てくれる眼と、二通りの眼があった。その両方の眼を、自分ははっきり見て取った。日本は、どうしてそうなんだろう。中国には、無関心か関心かの二つしかない。日本には、憎悪と、愛情と、両極端がある。どうしてそうなんだろう。自分が異国人である故からであろうか。
そんなことを聞きながら、俺の方では、憎悪と愛情との流転変質のことを考えていた。憎悪にせよ愛情にせよ、それは恒常的なものではなくて、いつも一方から他方へと移り変り、相対的な人事関係によって、刻々に変化する。愛すればこそ憎むなどと言うのは、おめでたい限りで、憎めばこそ愛すると逆に言ったら、どうなるか。
俺には、どぶろくだけが頼りだった。
「異国人の中にあっての憂愁だね。僕には、同国人の中にあっての憂愁が、いつもあるよ。」
「あんたとは別です。だから、憂愁があるなら、その憂愁を共にしましょう。」
「よかろう、共にしよう。」
「今夜は、飲み明かしましょう。わたしのお別れの宴です。いくらでもある限り、飲んで下さい。」
酔眼ばかりでなく、酔った意識が、朦朧として、体も支えかねる心地だった。