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「にんじん」とルナアルについて

「にんじん」とルナアルについて

岸田 国士

線上閱讀岸田 国士《「にんじん」とルナアルについて》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,055 字 · 8 頁

青空文庫

ヴィクトル・ユゴオがそれである。「嫌いなものが嫌いなほど、好きなものが好きではない」という一句が、彼の箴言めいた文章のなかにあるが、例によって、彼らしい言葉の遊びの風を装いながら、ぴたりと彼の本音を言いあてている。彼は、ある意味で、表現の潔癖を生命とし、そして、その限界があやうく文学を扼殺しようとしている、実に犠牲の大きい仕事を果したユニックな才能である。

アンドレ・ジイドもまた文学的にはおよそルナアルとは血縁を異にした存在であるが、互いに、その長所と弱点とを認め合っていたことは面白い。ジイドが、「ルナアルの日記」刊行に際し、この作家の優れた業績を一応讃えながら、なおかつ、「ルナアルの庭には、もうすこし水を撒いてやる必要がある」と言った。ところが、ルナアルがそれを知ったらなんというか。ルナアル自身はもちろん、ルナアルをひいきにするわれわれとしては、ルナアルの文学に、これ以上水気は不必要だと言いたいところである。東洋風に言えば、「カレきった文体」こそがルナアルの本領であるわけだが、ジイドの言おうとするところは、むしろ、ルナアルのある種の「狭さ」と「依怙地」