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へちまのき
へちまの木
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《へちまの木(へちまのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,120 字 · 58 頁
女主人のおるいは躯こそ小柄だが、ちょっと珍らしいほどの美貌で、細おもての顔や躯つきが調和がとれているため、すらっとして背丈が高いようにみえた。木内桜谷は自分で世話をしたのに、おるいの美貌に気づかなかったのか、半月ばかりすると、しきりに房二郎にからみだした。
「房やん、もうあの後家さんとできたんじゃあねえのか」
「なんだい、その後家さんてえのは」
「小舟町のおるいさんよ、白ばっくれたってだめだぜ」
房二郎はくすっと笑った、「初めて聞く名だが、おれが部屋を借りてる、うちのばあさんのことかい」
「ばあさんだって」
「よくは知らねえが、もう三十四五になるんだろう、おれにゃあおふくろみてえなもんだ」
文華堂の隣り町、馬喰町二丁目の横丁に「とんび」という小さな店がある。五十くらいの夫婦だけでやってい、店構えも器物もしもたやふうだし、肴も三品より多くは出来ないけれども、酒だけは新川からじかに取るそうで、それを自慢にしていた。みつけたのは房二郎で、帰りには一日おきくらいに、木内をさそって飲みに寄った。
「おふくろか」と桜谷は酒を啜りながら、渋い顔をした、「そういうことを聞くと、自分のとしを思いだすよ」