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へちまのき
へちまの木
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《へちまの木(へちまのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,120 字 · 58 頁
「それを売れるように書くのが、木内さんの腕じゃあないのかな」と木原はにやにやしながら云った、「この夏、新吉原の女郎の心中はよく売れたそうじゃありませんか、二人とも死んだことになってるが、女郎のほうはまだぴんぴんしているし、あの瓦版のおかげで、たいそうはやってるそうですからね」
「よしてくれ」と木内桜谷が云った、「そんなことは聞きたくもねえや」
「筆の力ですよ」木原は軽薄に笑った、「木内さんが書けば、どんなに屑だねでも売れること間違いなしさ、しっかり頼みますよ」
そしてへらへら笑いながら、木原桜水は出ていった。
「たいした野郎だ」と木内は書きながら云った、「いいたねは金になるほうへ持ってゆき、安い屑だねはこっちへ持って来やあがる、それで実際に書くおれなんぞより、ずっと多くちょび髭から召し上げるんだからな、――なにが可笑しいんだ」
房二郎は手を振って、「いや違うんだ、その話じゃあないんだ」と云った、「いま桜水が神田鍛冶町と云ったとき、初めておまえさんに会ったときのことを思いだしたんだ」
「沢茂のことかい」
「刺身のかなっけのことじゃあねえ」と房二郎がまた忍び笑いをしながら云った、「あのときおれたちの脇に二人の客がいた、その一人がさ、子供が寝小便をしたので、こらしめのためにその蒲団を背負わせて、町内を三遍廻って来いと出し