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みさごのすし

みさごの鮨

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《みさごの鮨(みさごのすし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,198 字 · 47 頁

青空文庫

」

「あッそうだ。」

と慌てて片足を挙げたと思うと、下して片足をまた上げたり、下げたり。

「腹が空いたろで、早くお飯を食わせようと思うたでね。急いたわいな、旦那さん。」

と、そのまま跳廻ったかと思うと。

「北国一だ。」

と投げるように駈け出した。

酒は手酌が習慣だと言って、やっと御免を蒙ったが、はじめて落着いて、酒量の少い人物の、一銚子を、静に、やがて傾けた頃、屏風の陰から、うかがいうかがい、今度は妙に、おっかなびっくりといった形で入って来て、あらためてまた給仕についたのであった。

話は前後したが、涙の半紙はここにあった。客は何となく折を見て聞いたのである。

「いましがたちょっと買ものをして来たんだが、」

と言継いで、

「彼家に、嫁さんか、娘さんか、きれいな女が居るだろう。」

「北国一だ。あはははは。」

と、大声でいきなり笑った。

「まあまあ、北国一としておいて、何だい、娘かい、嫁さんかい。」

また大声で、

「押惚れたか。旦那さん。」

「驚かしなさんな。」

「吃驚しただろ、あの、別嬪に。……それだよ、それが小春さんだ。この土地の芸妓でね、それだで、雑貨店の若旦那を、治兵衛坊主と言うだてば。