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みさごのすし

みさごの鮨

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《みさごの鮨(みさごのすし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,198 字 · 47 頁

青空文庫

色も空も一淀みする、この日溜りの三角畑の上ばかり、雲の瀬に紅の葉が柵むように、夥多しく赤蜻蛉が群れていた。――出会ったり、別れたり、上下にスッと飛んだり。あの、紅また薄紅、うつくしい小さな天女の、水晶の翼は、きらきらと輝くのだけれど、もう冬で……遊びも闌に、恍惚したらしく、夢をうように、ふわふわと浮きつ、沈みつ、漾いつ。で、時々目がさめたように、パッと羽を光らせるが、またぼうとなって、暖かに霞んで飛交う。

日南の虹の姫たちである。

風情に見愡れて、近江屋の客はただ一人、三角畑の角に立って、山を背に繞らしつつ彳んでいるのであった。

四辺の長閑かさ。しかし静な事は――昼飯を済せてから――買ものに出た時とは反対の方に――そぞろ歩行でぶらりと出て、温泉の廓を一巡り、店さきのきらびやかな九谷焼、奥深く彩った漆器店。両側の商店が、やがて片側になって、媚かしい、紅がら格子を五六軒見たあとは、細流が流れて、薬師山を一方に、呉羽神社の大鳥居前を過ぎたあたりから、往来う人も、来る人も、なくなって、古ぼけた酒店の杉葉の下に、茶と黒と、鞠の伸びたほどの小犬が、上になり下になり、おっとりと耳を噛んだり、ちょいと鼻づらを引かき合ったり。