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みさごのすし
みさごの鮨
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《みさごの鮨(みさごのすし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,198 字 · 47 頁
場合によれば、表向き、治兵衛をここへ呼んで逢わせるも可かろう。あの盲いた人、あの、いたいけな児、鬼も見れば角がなごむ。――心配はあるまいものの、また間違がないとも限らぬ。その後難の憂慮のないように、治兵衛の気を萎し、心を鎮めさせるのに何よりである。
私は直ぐに立って、山中へ行く。
わざとらしいようでもあるから、別室へと思わぬでもなけれど、さてそうして、お前は爺さんたちと、ここに一所に。……決して私に構うなと言った処で、人情としてそうは行くまい、顔の前に埃が立つ。構わないにしても気が散ろう。
泣きも笑いもするがいいが、どっちも胸をいためぬまで、よく楽み、よくお遊び。」――
あの陰気な女中を呼ぶと、沈んで落着いただけに、よく分って、のみ込んだ。この趣を心得て、もの優しい宿の主人も、更めて挨拶に来たので、大勢送出す中を、学士の近江屋を発程ったのは、同じ夜の、実は、八時頃であった。
勿論、小春が送ろうと言ったが、さっきの今で、治兵衛坊主に対しても穏でない、と留めて、人目があるから、石屋が石を切った処、と心づもりの納屋の前を通る時、袂を振切る。……
お光が中くらいな鞄を提げて、肩をいからすように、大跨に歩行いて、電車の出発点まで真直ぐに送って来た。