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めくらぞうし

めくら草紙

太宰 治

線上閱讀太宰 治《めくら草紙(めくらぞうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,695 字 · 14 頁

青空文庫

狐は、その友人を好いているのだもの。けだものに魅こまれた友人は、私の気のせいか、一日一日と痩せてゆくようである。私は、そしらぬふりして首尾のまったく一貫した小説に仕立ててやり、その友人にそれとなく知らせてやったほうがよいのかもしれぬ。その友人は、「人生四十から。」という本を本棚にかざってあるのを私は見たことがあって、自分の生活を健康と名づけ、ご近所のものたちもまた、その友人を健康であると信じているようである。もし友人が、その小説を読み、「おれは君のあの小説のために救われた。」と言ったなら、私もまた、なかなか、ためになる小説を書いたということにならないだろうか。

けれども、もう、いやだ。水が、音もなく這い、伸びている様を、いま、この目で、見てしまったから、もう、山師は、いやだ。お小説。百篇の傑作を書いたところで、それが、私に於いて、なんだというのだ。(約三時間。)私は眠っていたのではないのだよ。そうだ。おまえの言葉を借りて言えば、私は、思いにしずんでいたのである。

私は、枕草紙の、ペエジを繰る。「心ときめきするもの。――雀のこがひ。児あそばする所の前わたりたる。