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わがしそうのいぶき

わが思想の息吹

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《わが思想の息吹(わがしそうのいぶき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 2,454 字 · 5 頁

青空文庫

丹羽君は、なぜWだけ仮名にしたか、仮名にする意味がないではないか、という。

自伝とか私小説といえば、事実を主体にしたものと思うことしか知らぬから、そういう批評が出てくるのだが、あのWは、どうしても仮名でなければならないのである。

なぜなら、あの作中の諸事実は、すべて私の一つの角度、一つの思想によって、選ばれ、構成されているのだが、Wの場合だけは、構成を外れた事実であって、これに就てのみ、作者は選択や構成ができず、つまり、いたわるところがミジンといえども無いのである。だからW氏に限って、どうしても、仮名でしか書くことが出来ないのである。

なぜ、Wだけが仮名であるか、こういうところに私の文学を読み解く鍵が秘められているのであるのに、丹羽君の如く、Wだけ仮名にするとは言語道断、なぜ他の人々に限って実名でスキャンダルを書きあばくか、こう平ぺったく、紋切型にしか読めなくては話にならぬ。

文学に於て、思想というものは、思想の形で在るものではないのである。単純なところでは、作中人物の言葉などより、生きて行く生き方、行動の展開の方が思想なのであるが、その他、複雑な、こまかいところでは、今申し述べたような、何を書き何を書かなかったか、なぜ仮名にしなければならぬか、そんなところにも、作者の思想が、細かく、まんべんなく行き渡っ