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わがあいするしじんのでんき(さん)
わが愛する詩人の伝記(三)
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《わが愛する詩人の伝記(三)(わがあいするしじんのでんき(さん))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,406 字 · 22 頁
た。或時君の妹に何か購いたいがというと、お前におれの妹が買物をして貰うというばかなことがあるか、買物ならおれがしてやる冗らない事をいうなと言って私は叱られた。彼はゆき子さん、みね子さん、かね子さんに何子さんというふうに、たくさんの妹の美人達を持ち、それが外の女達から振られでもすると、家にもどって妹達を見ると振られたことも薄らいで来て、すうとするらしく、彼は晴天白日を感じていた。
萩原と私の関係は、私がたちの悪い女で始終萩原を追っかけ廻していて、萩原もずるずるに引きずられているところがあった。例の前橋訪問以来四十年というものは、二人は寄ると夕方からがぶっと酒をあおり、またがぶっと酒を呑み、あとはちびりちびりと飲んで永い四十年間倦きることがなかった。帽子をあみだにかむり敷島というタバコの吸口を噛みちらし、時には酒はこぼし放題になった萩原は、突然、眼をさましたような正気づいた眼付をして、こうしてはいられないという気確さを見せて、君、おれは失敬するといって立ちあがることがった。そんな瞬間には新宿のいんちき酒場の亡霊共がものすごく彼を招くのだ、彼の乱酔の渦中に女どもが叫んで彼の帽子を脱がせ、上着から財布をもぎ取り、髪をむしり脇の下をくすぐったりする女どもが、白ねずみのように股ぐらを駈け廻るのである。