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わがまち
わが町
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《わが町(わがまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,840 字 · 186 頁
8
オトラが居なくなると、君枝はふたたびしょんぼりした娘になってしまった。
他吉の俥のあとに随いて走りながら、陰気な唇を噛み続け、笑い顔ひとつ見せなかった。
ところが、半年ほど経ったある日のことである。
〆団治は君枝と次郎を千日前へ遊びに連れて行った。
そして竹林寺の門前で鉄冷鉱泉(むねすかし)をのみ、焼餅を立ちぐいしていると、向い側の剃刀屋から、
「し、し、し、〆さんとち、ち、ちがうか」
と、言いながら出て来た男がある。
「なんや、維康さんかいな。えらいとこで会うたな」
いつか柳吉は蝶子といっしょに河童路地へ来たことがあり、その時の顔馴染みであった。
「――この頃どないしたはりまんねん?」
〆団治が言うと、柳吉は照れくさそうに、
「い、い、い、いま、この向いの、か、か、剃刀屋に働いてまんねん」
「さよか、そら宜しおまんな。蝶子はんも喜びはりまっしゃろ、あんたが働く気になって……。どないだ? 餅ひとつ」
「い、い、いや、もう、毎日向いでな、な、ながめてたら、食う気起りまへんさかい。た、た、た、種はんによろしゅう言うとくなはれ」
「よろしおま。ちとまたどうぞ路地へも遊びに来とくなはれ。