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ひきょうもの
カインの末裔
有島 武郎
線上閱讀有島 武郎《カインの末裔(ひきょうもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,876 字 · 52 頁
五、六人の人が出はいりする前に、彼は早くもそんなことをする無益さを思い知らねばならなかった。頭の鈍い人たちは、申し立つべき希望の端くれさえ持ち合わしてはいなかったし、才覚のある人たちは、めったなことはけっして口にしなかった。去年も今年も不作で納金に困る由をあれだけ匂わしておきながら、いざ一人になるとそんな明らかなことさえ訴えようとする人はなかった。彼はそれでも十四、五人までは我慢したが、それで全く絶望してもう小作人を呼び入れることはしなかった。そして火鉢の上に掩いかぶさるようにして、一人で考えこんでしまった。なんということもなく、父に対する反抗の気持ちが、押さえても押さえても湧き上がってきて、どうすることもできなかった。
ほど経てから内儀さんが恐る恐るやって来て、夕食のしたくができたからと言って来た。食慾は不思議になくなっていたけれども、彼はしょうことなしに父の座敷へと帰って行った。そこはもうすっかりかたづけられていて、矢部を正座に、父と監督とが鼎座になって彼の来るのを待っていた。彼は押し黙ったまま自分の座についたが、部屋にはいるとともに感ぜずにはいられなかったのは、そこにただよっているなんともいえぬ気まずい空気だった。