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カーライルはくぶつかん

カーライル博物館

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《カーライル博物館(カーライルはくぶつかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,821 字 · 14 頁

青空文庫

婆さんは人が聞こうが聞くまいが口上だけは必ず述べますという風で別段厭きた景色もなく怠る様子もなく何年何月何日をやっている。

余は東側の窓から首を出してちょっと近所を見渡した。眼の下に十坪ほどの庭がある。右も左もまた向うも石の高塀で仕切られてその形はやはり四角である。四角はどこまでもこの家の附属物かと思う。カーライルの顔は決して四角ではなかった。彼はむしろ懸崖の中途が陥落して草原の上に伏しかかったような容貌であった。細君は上出来の辣韮のように見受けらるる。今余の案内をしている婆さんはあんぱんのごとく丸るい。余が婆さんの顔を見てなるほど丸いなと思うとき婆さんはまた何年何月何日を誦し出した。余は再び窓から首を出した。

カーライル云う。裏の窓より見渡せば見ゆるものは茂る葉の木株、碧りなる野原、及びその間に点綴する勾配の急なる赤き屋根のみ。西風の吹くこの頃の眺めはいと晴れやかに心地よし。

余は茂る葉を見ようと思い、青き野を眺めようと思うて実は裏の窓から首を出したのである。首はすでに二返ばかり出したが青いものも何にも見えぬ。右に家が見える。左りに家が見える。