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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
線上閱讀海野 十三《ゴールデン・バット事件(ゴールデン・バットじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 頁
「今夜はコンディションが悪かったよ」と私は、半分は照れかくしに云った。
「そうでも無いさ。大いに面白かった」
「それにもう一人、君に是非紹介したいと思っていた女も休んでいやがってネ」
「うん、うん、君江――という女だネ」
「そうだ、君江だ。こいつと来たら、およそチェリーとは逆数的人物でネ」
「チェリーというのかい、あのミツ豆みたいな子は……」
「ミツ豆? ミツ豆はどうかと思うナ」(あわれ吾が薔薇の蕾よ)――
「え?」
「イヤ其の君江というのくらい、性能優れた女性はいないよ。その熱情といい、その魅力といい、更にその能力に於ては、世界一かも知れんぞ。生きているモナリザというのは、正にあの君江のことだ」
と私は、暗がりをもっけの幸いにして、自分でも歯の浮くような饒舌をふるった。
あとは二人とも、鉛のように黙って、あの裏街の軒下を歩いていった。秋はこの場末にも既に深かった。夜の霧は、頸筋のあたりに忍びよって、ひいやりとした唇を置いていった。
(遠い路だ――)仰ぐと、夜空を四角に切り抜いたようなツルマキ・アパートが、あたりの低い廂をもった長家の上に超然と聳えていた。
と、そのときだった。