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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

線上閱讀海野 十三《ゴールデン・バット事件(ゴールデン・バットじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 頁

青空文庫

「さアこれが投薬簿です。――」

帆村は帳面をとりあげると、念入りに一頁一頁と見ていった。丘田医師は次第に苛々している様子だった。そのうちに帆村は、投薬簿をパタリと閉じた。

「どうも有難うございました」

「もういいのですか」

「ええ、もう用は済みました。この位で引揚げさしていただきましょう」

帆村はうしろを向いて、そこにあった大理石の手洗に手を差出して、水道の栓をひねった。冷たそうな水がジャーッと帆村の手に懸った。

5

外へ出ると、もう街はとっぷり暮れていた。快い微風が、どこからともなく追駈けてきて、頤のあたりを擽るように撫でていった。

私たちは橋の上に来た。その橋を渡れば、すぐカフェ・ゴールデンバットの入口があった。

このとき帆村は、ツカツカと橋の欄干の方へ近づいていった。そこで彼はポケットを探っているようであったが、キャラメルの函二つ位の大きさの白い紙包みをとり出した。どうするのかと見ていると、呀ッという間もなく、その紙包みは帆村の手を離れて、川の水面に落ちていった。帆村はパタパタと両方の掌を打ち合わせて、なにかをしきりに払っていた。

その夜のカフェ・ゴールデン・バットは宵の口だというのに、もう大入満員だった。