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スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
線上閱讀辻村 伊助《スウィス日記(スウィスにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 216,275 字 · 410 頁
夏になると、停車場の売店や、通りのここかしこに店を張って、花を売るものが沢山あるが、これ等は云うまでもなく、麓の庭に培れたので、手のとどく限りは、根を採ることは禁ぜられても、大抵取り尽されて居ると云う。私はいつも、その気高い花を憶うときに、これは手の届かない高嶺の花であると思った。――そのエーデルワイスの群は、氷河にのぞむこの懸崖に咲き乱れて居る。
私は二人のガイドに、身体に縛りつけたロープの端を、しっかと押えてもらって、絶壁の上にのり出した。岩の角から頭を出すと、遠い下の方に、アイスメーヤの、横にいくつとなく口を開いた、クレヴァースがのぞかれた。カウフマンは、この時私の足を引っぱってくれる、無理に乗り出して、花に手をふれた時は、只もう無闇にうれしかった。あちこち捜し廻って、漸く十一本のエーデルワイスを摘んだら、頭に血が下って、眼が眩むように覚えた、もう少し下の方にも、一群れあるが、これは宙乗りをやらなければとても採れないから、くわえ煙管で待ってる近藤君に、お譲りすることにして、一先ず上に引き上げると、人の気も知らないで近藤君は、採るなら君が行くさ、妻子のあるものがする仕事じゃないって答えた、そんなら、いっそ山登りなんか止めればいいのに。