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スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
線上閱讀辻村 伊助《スウィス日記(スウィスにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 216,275 字 · 410 頁
見送っていた。ガイド達に階段を押し上げられて、此の間、近藤君と泊った室の寝台にたおれると、もう生体もない位ぐったりして、ずぶぬれの着物を脱がせて、医者の命つけで、娘の持って来たコンニャックワッサーの、熱い奴をぐっと飲むと、あとは、たわいもなく寝てしまった。時々、痛いんで眼がさめる、宿の娘は深切に附きっ切りで、氷河からかいて来たろう、氷を手拭に包んで、頭を冷やしてくれる。
着いた時には、誰だか蝋燭を持って、先きに立っていたから、彼れこれ夜の八時過ぎだったろう。雨は二階屋根が流れるほどな土砂降りで、陽気のゆるんだせいか、アイガーグラートあたりの、近いところでくり返されるアヴァランシュが、その度毎に頭にこたえる、とまたうとうと眠ってしまう。
ふと眼を開くと、例の娘が、紅茶にロールを持って来た、頭を上げるとビンビン痛むから、横むきに寝たままで熱い紅茶をすする、ベルネリン型の丸顔で、丈の低いのがいかにも山の女らしい。戦争の噂さは、こんな山の奥まで拡がったと見えて、今朝の白ら白ら明けに、私達を助けに来たガイド連が、下の食堂へなだれ込んだのを聞きつけて、村で戦が始まったと早合点して泣き出したということだ。