輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

線上閱讀辻村 伊助《スウィス日記(スウィスにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 216,275 字 · 410 頁

青空文庫

然しその中に私はひとり取り残されて、発車信号の六点鐘を寥しく聞きながら、眼を閉じてアルプの雪を思い過ぎ去った前の旅を憶った。むくろを搬ぶに似た汽車は山脚の樹林を貫いて遂にシュピエツに着く。

桜桃の実のる七月なかば、こうして四度スウィスを訪れた……。

薄くもり日の日暮れに近い雪の山脈は、この日も空に屹えていた。トゥーンの水は暗く沈んで、プロムナードのポプラの若葉が際だって明るい。湖水を囲む前山の急斜は、残雪のまだらに見える岩壁の麓を取りまく常緑樹の森と、一抹の靄を含む落葉松林の入り交った丘につづいて、南へ曳く高原の空にはブリュームリスアルプが氷山のように美しい。

「●「続スウィス日記」原稿」のキャプション付きの図

●「続スウィス日記」原稿

私達は長い旅の後こうして湖畔の家へ帰って来て、窓をあけ放してこの景色を眺めた。そこには何の変りもない、すべてが元のままだ、庭さきから湖へつづく草原にはカムパヌラや羽衣草が繁っている。シュピエツ城の塔の風見がフェーンの風に曲ったのも昔のままだ。アルプの雪は軒端に近く、人も家も山も湖水も、涙ぐんだ眼から寥しく消え去ったあの六年前が、こうして見ると僅か四、五日あとのような気もする。