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デカダンこうぎ

デカダン抗議

太宰 治

線上閱讀太宰 治《デカダン抗議(デカダンこうぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,873 字 · 8 頁

青空文庫

帳場の叔父さんの真面目くさった文字で、歌舞の部、誰、誰、と五人の芸者の名前が書き並べられて、謝礼いくら、いくらと、にこりともせず計算されていた。私は五人の名前を見て、一ばんおしまいから数えて二人めの、浪、というのが、それだと思った。それにちがいないと思った。少年特有の、不思議な直感で、私は、その女の子の名前を、浪、と定めてしまって、落ちついた。

いまに大きくなったら、あの芸者を買ってやると、頑固な覚悟きめてしまった。二年、三年、私は、浪を忘れることが無かった。五年、六年、私は、もはや高等学校の生徒である。すでにもう大人になった気持である。芸者買いしたって、学校から罰せられることもなかったし、私は、今こそと思った。高等学校の所在するその城下まちから、浪のいる筈のAという小都会までは、汽車で一時間くらいで行ける。私は出掛けることにした。

二日つづきの休みのときに出掛けた。私は、高等学校の制服、制帽のままだった。謂わば、弊衣破帽である。けれども私は、それを恥じなかった。自分で、ひそかに、「貫一さん」みたいだと思っていた。幾春秋、忘れず胸にひめていた典雅な少女と、いまこそ晴れて逢いに行くのに、最もふさわしいロマンチックな姿であると思っていた。