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トシオのみたもの
トシオの見たもの
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《トシオの見たもの(トシオのみたもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,531 字 · 21 頁
「私は今から七年前に、この世の中をただ真赤なものと極めて、ほかの小鳥達と別れて、一図に太陽を目がけて飛んで行きました。はじめのうちは、自分の翼と太陽と、同じに真赤なのが、愉快で愉快でなりませんでした。けれど三年目の末頃には、あまり真赤なばかりが眼に馴すぎて、少し飽き足りなくなりました。そして、四年目の末には、もう私の眼は、まったく飽きはてて、疲れ切って仕舞ったので御座います。で、私は、そうなると、却って猛勇を奮い起し、遮二無二翼を早めて、太陽を目がけて、飛びつこうとしました。恰度、五年目の末でした、私が、はた、と太陽に突き当った拍子に私の眼は危く焼けただれようとして仕舞いました。その時です。私は苦しさに思わず、うしろを、振り向きました。するとどうでしょう。今まで、かりにも、見向こうとしなかった自分のうしろの、はるか彼方に青々とした水が、とうとうと溢れて居るのでありました。私の眼は、それを見ると、あやうく焼けただれ相になった熱さが拭われて、どんなに涼しく晴やかになったでしょう。私はうれしくてたまりませんでした。そしてまた、私が、ほかの小鳥と別れる時、何でも、この世の中は、赤いばかりだと云い張った強情が、恥かしくてなりませんでした。