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ドーヴィルものがたり

ドーヴィル物語

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《ドーヴィル物語(ドーヴィルものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,723 字 · 44 頁

青空文庫

浜には今年流行の背中の下まで割れた海水着の娘や腰だけ覆って全裸の青年達が浪に抱きつき叩かれ倒され、遠くから見る西洋人の肌は剥き立てのバナナのようにういういしい――小田島は突然顔を赫らめた。彼は矢張りイベットの肉体を結局は想い続けて居たのでは無いか――いつも自分の心理を突き詰めて行くのに卑怯で気弱な彼はまたしても首を強く左右へ振った。そして何かに逆らうような気勢でさっさと歩き出した。

遊覧客相手の贅沢品屋は防火扉をおろしてまだ深々と眠って居た。扉に白いチョークで、西班牙皇帝の似顔絵が拙く楽書きされて居る。自国の乱れた政情の間を潜って、時々陛下は茲へ遊びに来られた。陛下の古典風な顔はフランスの何処にでも人気があった。衣裳屋のショーウインドウのマネキン人形はまだ消えない朝の電燈の下で今年の秋の流行はペルシャ野羊であることを使嗾して居る。霧雨はいつの間にか晴れて、道は秋草の寝乱れて居る赫土の坂を上り、ポロ競技場が彼の眼の前に展開された。

イギリス、対アメリカのポロ最終競技が今日午後にある。アメリカ選手達の予備練習の馬群が浪の泡立つ様にさっと寄ってはさっと引返す間に、緑の縞や薄桃色のユニフォームが、ちらちらする。