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ニイチェについてのざっかん
ニイチェに就いての雑感
萩原 朔太郎
線上閱讀萩原 朔太郎《ニイチェに就いての雑感(ニイチェについてのざっかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,938 字 · 14 頁
一方であの荒鷲のやうなニイチェは、もつと勇敢に正面から突撃して行き、彼の師匠が憎悪して居たところの、すべての Homo と現象に対して復讐した。言はばニイチェは、師匠の仇敵を討つた勇士のやうなものである。文部省の教科書でも、ニイチェは大に賞頌して書かれねばならない。
最後に、僕自身のことを話さう。僕はショーペンハウエルから多くを学んだ。僕の第二詩集「青猫」は、その惑溺の最中に書いた抒情詩の集編であり、したがつてあのショーペンハウエル化した小乗仏教の臭気や、性慾の悩みを訴へる厭世哲学のエロチシズムやが、集中の詩篇に芬々として居るほどである。しかし僕は、それよりも尚多くのものをニイチェから学んだ。ニイチェは正しく僕の「先生」である。だが僕の学んだ部屋は、主としてニイチェの心理学教室であつた。形而上学者としてのニイチェ、倫理学者としてのニイチェ、文明批判家としてのニイチェには、僕として追跡することが出来なかつた。換言すれば、僕は権力主義者でもなく、英雄主義者でもなく、況んやツァラトストラの弟子でもない。僕は「心理学」と「文学」だけを彼に学んだ。僕の他の教師であるところの、ポオやドストイェフスキイやから、丁度その同じ学科だけを学んだやうに。