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ニイチェについてのざっかん

ニイチェに就いての雑感

萩原 朔太郎

線上閱讀萩原 朔太郎《ニイチェに就いての雑感(ニイチェについてのざっかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,938 字 · 14 頁

青空文庫

即ち言へば、アフォリズムはそれ自ら「詩」の形式の一種なのである。(したがつて西洋の詩人たちは、独りニイチェに限らず、グウルモンでも、ジャン・コクトオでも、ボードレエルでも、ヴァレリイでも、すべて皆アフォリズムを書いてる。それは正しく「詩人の文学」なのである。)

アフォリズムは詩である。故にこれを理解し得るものも、また詩人の直覚と神経とを持たねばならない。そこでニイチェを理解するためには、読者に二つの両立した資格が要求される。「詩人」であつて、同時に「哲学者」であることである。純粋の理論家には、もちろんニイチェは解らない。だが日本で普通に言はれてるやうな範疇の詩人(彼等は全く没思想である)にも、また勿論ニイチェは理解されない。だがその二つの資格をもつ読者にとつて、ニイチェほど興味が深く、無限に深遠な魅力のある著者は外にない。ニイチェの驚異は、一つの思想が幾つも幾つもの裏面をもち、幾度それを逆説的に裏返しても、容易に表面の絵札が現れて来ないことである。我々はニイチェを読み、考へ、漸く今、その正しい理解の底に達し得たと安心する。だがその時、もはやニイチェはそれを切り抜けて居る。