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ニュー・ヨーク 『せいしゅんのじがぞう』より
ニュー・ヨーク 『青春の自画像』より
前田河 広一郎
線上閱讀前田河 広一郎《ニュー・ヨーク 『青春の自画像』より(ニュー・ヨーク 『せいしゅんのじがぞう』より)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,334 字 · 13 頁
そうやっていく通りも街を引きまわされた上、栗の果横丁そっくりの借間のある二階の一室へ案内された。がらんとした部屋に、一人の日本人が小卓にむかって食事をしている。
『三沢君、これシカゴから今ついたばっかりの僕の友人、前田河だよ。』
何年来の旧友みたいに、木元は紹介する。三沢と呼ばれる男は、糠パンにバターを塗っていた手をとめて、こちらへむきなおった。
『How do you do? ミサワです。』
扁平ったい声であった。冬もまぢかなのに、テニス用の運動靴をはいている。
木元は木元で、別行動をとっていた。彼はズボンのポケットから、やにわにウイスキーの罎をぬき出すと大きい掌で飲み口をぐいと拭くと、私の方にさしむけた。
『ともかく、大兄のニュー・ヨーク入りを祝おう。』
『君は数学の先生だって?』
私は、ちょっと口をあてる真似をして、罎をかえしながら、皮肉のつもりでこう云つた。
『うむ、札幌でよ。餓鬼どもをあいてに、サイン、コサインだなんて、馬鹿々々しくてね、それでも二年ほどやっていたかな、しまいに面倒くさくなって、満洲からアメリカへやって来たのさ。』
そのあいだ、彼は大口をあいて、煙草色の液体をゴボゴボとからだの中へ注ぎ入れた。