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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《パノラマ島綺譚(パノラマとうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 頁
で、若し彼が何か学んだ所があるとすれば、それは決して学問の正道ではなくて、謂わば邪道の奇妙に一方に偏したものであったに相違ありません。それ故にこそ、学校を出て五六年もたっても、まだ就職も出来ないでまごまごしている訳なのです。
尤も人見廣介自身が、何かの職について、世間並な生活を営もうなんて、神妙な考は持っていなかったのです。実をいうと、彼はこの世を経験しない先から、この世に飽き果てていたのです。一つは生来の病弱からでもありましょう。それとも青年期以来の神経衰弱のせいであったかも知れません。何をする気にもなれないのです。人生の事が凡て、ただ頭の中で想像した丈けでもう十分なのです。何もかも「大したことはない」のです。そこで、彼は年中汚い下宿の一室に寝転んだまま、それで、どんな実際家も嘗て経験したことのない、彼自身の夢を見つづけて来ました。つまり、一口に云えば、彼は極端な夢想家に外ならぬのでありました。
では、彼はそうして、あらゆる世上のことを放擲して、一体何を夢見ていたかと云いますと、それは、彼自身の理想郷、無可有郷のこまごました設計についてでありました。