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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《ピストルの使い方(ピストルのつかいかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 頁

青空文庫

肩つきが寂しいでしょう。そんなに煽切ったのに、職人も蕎麦の行燈で見た、その近常さんの顔が土気色だというんですもの。駆寄ろうとする一息さきに、蕎麦屋がうしろから抱留めました。」

「難有い。ああ、可かった。」

「だから、貴方は慌てものだと、云うんですよ……蕎麦屋も慌てものだわね。爺の癖に。近常さんが、(身投と間違えられましたか。)……そうではない。――(よそ様のお情で、書生をして、いま東京で修行をしている伜めが、十四五で、この土地に居ますうち、このさきの英語の塾へ、朝稽古に通いました。夏は三時起、冬は四時起。その夏の三時起に、眠り眠りここを歩行いて、ドンと躓いたのがこの石で、転ぶと、胸を打って、しばらく、息を留めた事がござりました。田舎寺のお小僧さんで、やっぱり朝稽古に通う、おなじ年頃の仲よしの友だちが来かかって、抱起したので助って、胸を痛めもしませんだが、もう一息で、睡りながら川へ流れます処。すればこの石は大恩人。これがあったために躓いたのでござりませぬ。石は好い心持でいる処を、ぶつかったのは小児めの不調法。通りがかりには挨拶をしましたが、仔細あって、しばらく、ここへ参るまいと存ずるので、会釈に一献進ぜました。