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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁
大久保からその話を聞きました。
「あんな蟹みたいな男と浮気するほど、あたしは落ちぶれてやしないよ、見当違いもいい加減にしてちょうだい」
ぼくは大久保に訊ねました。
「その、蟹みたいな男というのは、ぼくのことかね?」
「そうだよ。でも、おれが言ったんじゃなく、おフクさんだ。あまり気にしない方がいいよ」
「気にはしないがね、どうして君が疑われずに、ぼくが疑われるんだろう。君はずいぶん立入っているが、ぼくは何もしてない」
「何もしてないから、疑われるんじゃないかよ」
大久保はぎょろりと上眼遣いに、ぼくをにらみました。その眼にはかすかに憎しみの色があったようです。ぼくは背中にどっと疲労を感じながら呟きました。
「そうか。どんな意味か判らないけれど、そういうことか」
甚五はまた病院から飛び出して帰って来たのです。街の銭湯に入りたいからと、婦長に風呂銭をねだり、その金でパチンコをやり、ピースを取って金に換え、それを電車賃にして帰って来たんですな。そしてぼくの名をわめいてひとあばれしたが、銭湯からなかなか戻って来ないので病院側では、看護人を森タバコ屋に派遣して待機させていたから、甚五はあっさりと連れ戻されてしまった。