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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁

青空文庫

こちらの油断を見すまして、意識的に投げつけたんじゃないか。ぼくに当てるつもりでコントロールが狂って、バクに命中してしまった。――もちろんこれはその場で組立てた仮説で、相手は巨大なモロキュウなんだから、何を考えているか判らない。もしその仮説にしたがってわめけば、ぼくも甚五並みということになるので、不機嫌なバクをなだめなだめして獣医に連れて行き、止血の手当をしてもらいました。バクの散歩を引受けたばかりに、とんだ物入りでした。

「亀田クーン」

「おおお」

亀田君が出て来たようです。門のところに二人が向い合い、拳を振り上げる。

「ちッ、けッ、たッ!」

「ちッ、けッ、たッ!」

近頃の子供たちは、じゃんけんをする時、そんなかけ声でやるのです。一昨年あたりまでは、

「じゃんけんポカポカどっこいしょ!」

そのしょで拳を出していたようですが、長ったらしいからやがて廃れて、今は簡明に、

「ちッ、けッ、たッ!」

意味は知りません。意味はなく、ただ気合のものなのでしょう。

この「ちッけッたッ!」のあとはどうなるか。バレーボールかバスケットボールの球だろうと思うのですけれども、それをぼくの画室の板壁にどしんどしんとぶっつけて、どんな仕組みになっているのか、何点何点と点を取り合う遊びが始まるのです。