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リラのてがみ
リラの手紙
豊田 三郎
線上閱讀豊田 三郎《リラの手紙(リラのてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,702 字 · 30 頁
たが、襖越しに声を聞いたことはあり、龍野氏の前に踞んで、腕に余る猫を抱いていた写真を見て、兄の冷たい鋭どさが、ずっと奥にひそまって穏やかに輝いているのに惹かれたことがあった。実はその雑誌を今日古本屋で探し出して来て、妹の姿だけを切抜き、その手紙の中に入れて置いた処だった。久能が机の前に坐って、頼子宛の依頼状を認めていると、忍び足に階段を登って来た青江が平生にないおどおどした声で、入ってもよくってというので、急いで依頼状を隠し、うんと答えると、彼女は手に百合の花を持っていて、お友達にもらったのよ、と上気して言訳をいいながら、放り出されていた花瓶に生けて本柵の上に置くと、ああ強い、いやな匂だ、頼子の手紙のかおりの幻影が消えて了う、と不快さを明らさまに表わしながら、せっせと久能はノートを筆記した。忙しくて? と青江が寄って来ると忙しくて堪まらないんだ、こんなに溜っているとノートを広げて見せ、青江に少しの隙もみせず、追い遣って、階段の音がきえると、ホッとしてまた依頼状をかき出した。
頼子の手紙が来てからというものは、どういう刺戟からか、久能に示した青江の変化は激しかった。