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いちねんのけい

一年の計

佐々木 邦

線上閱讀佐々木 邦《一年の計(いちねんのけい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 頁

青空文庫

と言いながら、そのまゝ引き返し始めた。

そこは実際広いことは広い往来で、両側に街路樹が植えてあった。片岡君はそれを一本々々千鳥にかけて道幅を測るから、益※(二の字点、1-2-22)広きを覚える。可なり歩いた積りだけれど、容易に停留場へ出ない。

「広いにも広いが遠いにも遠い」

と街路樹の柵に凭れて、暫時休憩と定めた。

「何うかなさいましたか?」

と通り合せた人が寄って来た折、片岡君は唸っていた。

「出られない。何うしても出られない」

「出られないことはないです」

「いや、どうしても出られない」

と片岡君は泣き声を出したが、何処へも入っているのではない。柵に捉まって一本の樹の周囲を外から四角にグル/\廻っているのだった。

「大分酔っていますな」

と通行人は片岡君を柵から引き放して、

「何処へいらっしゃる?」

「家へ帰る」

「お家は何処です?」

「余計なお世話だ」

と極めつけて、片岡君は又道幅を測り始めた。それでも本性違わず、漸次停留場へ近づく。

「何うしても通れない」

と呟いて竟に立ち止まった時、片岡君は電信柱と睨みっこをしていた。片岡君が右へ避けると電信柱が右へ寄った。