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おもと

万年青

矢田 津世子

線上閱讀矢田 津世子《万年青(おもと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,043 字 · 13 頁

青空文庫

こう言っておいて、二ばん目の嫂は急に話題を変えた。

はぐらかされた三ばん目の嫂は、唇をキュッと釣って、聞えない振りで紅茶の匙をまわしていた。

福子は、さっきから可笑しくてならなかった。嫂たちの真剣な顔や、皮肉な応酬や、気持の探りあいなどを見ていると、しぜん、笑いがこみあげてくる。

「福子さんたら、困った人ね。」

上の嫂も、つりこまれて笑っていた。

客の帰った気配がしたので、福子は奥へ行ってみた。

隠居は、たった一人でお茶を飲みながら何か思案をしていた。

「おばあさま。わたしもお茶いただきたいの。」

福子を見ると、隠居はどういうつもりか眼鏡をはずして、にこにこと迎えた。

「さあさあ、おあがり。」

そして、自分で淹れて勧めた。

陽光がいつか縁からひいていた。福子は立って行って、硝子戸をしめた。

「あちらは、大分、賑やかなようだね。」

隠居は福子を相手にしていると、何んとなしほぐれて自然な気持だった。

福子もまた、このおばあさまの前に坐ると、何もかも忘れて、生れたままの相で大きな懐ろに抱かれている感じだった。

隠居が福子に見るのは、無垢な純真さだった。隠居には、その心が何よりだったのである。