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さんえもんのつみ

三右衛門の罪

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《三右衛門の罪(さんえもんのつみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,132 字 · 15 頁

青空文庫

」

「声もかけずに斬って参ったか?」

「かけなかったように思いまする。」

「その時には相手を何と思った?」

「何と思う余裕もござりませぬ。わたくしは傘を斬られると同時に、思わず右へ飛びすさりました。足駄ももうその時には脱いで居ったようでございまする。と、二の太刀が参りました。二の太刀はわたくしの羽織の袖を五寸ばかり斬り裂きました。わたくしはまた飛びすさりながら、抜き打ちに相手を払いました。数馬の脾腹を斬られたのはこの刹那だったと思いまする。相手は何か申しました。………」

「何かとは?」

「何と申したかはわかりませぬ。ただ何か烈しい中に声を出したのでございまする。わたくしはその時にはっきりと数馬だなと思いました。」

「それは何か申した声に聞き覚えがあったと申すのじゃな?」

「いえ、左様ではございませぬ。」

「ではなぜ数馬と悟ったのじゃ?」

治修はじっと三右衛門を眺めた。三右衛門は何とも答えずにいる。治修はもう一度促すように、同じ言葉を繰り返した。が、今度も三右衛門は袴へ目を落したきり、容易に口を開こうともしない。

「三右衛門、なぜじゃ?」

治修はいつか別人のように、威厳のある態度に変っていた。