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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《三四郎(さんしろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,765 字 · 343 頁

青空文庫

「いつまでも借りておくのは、いやだから、家へそう言ってやったんだ」

「君はいやでも、向こうでは喜ぶよ」

「なぜ」

このなぜが三四郎自身にはいくぶんか虚偽の響らしく聞こえた。しかし相手にはなんらの影響も与えなかったらしい。

「あたりまえじゃないか。ぼくを人にしたって、同じことだ。ぼくに金が余っているとするぜ。そうすれば、その金を君から返してもらうよりも、君に貸しておくほうがいい心持ちだ。人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がしてみたいものだ」

三四郎は返事をしないで、講義を筆記しはじめた。二、三行書きだすと、与次郎がまた、耳のそばへ口を持ってきた。

「おれだって、金のある時はたびたび人に貸したことがある。しかしだれもけっして返したものがない。それだからおれはこのとおり愉快だ」

三四郎はまさか、そうかとも言えなかった。薄笑いをしただけで、またペンを走らしはじめた。与次郎もそれからはおちついて、時間の終るまで口をきかなかった。

ベルが鳴って、二人肩を並べて教場を出る時、与次郎が、突然聞いた。

「あの女は君にほれているのか」

二人のあとから続々聴講生が出てくる。