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さんあくにんものがたり
三悪人物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《三悪人物語(さんあくにんものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 頁
ござる。……客のほうも御紹介しよう、上座のまん中にいる肥ったのが蓑賀参蔵、これは奉行所の筆頭与力、左に皆疋太九郎、次席与力、右に同じく矢土真平、その脇が池名勘兵衛、みんな歴々の奉行所幹部である。
「どうも近ごろは道徳がみだれとる」
蓑賀参蔵殿が苦々しげに盃をあおられた、
「幾ら御禁令を出しても守らん、他人の迷惑などそっちのけで、自分だけ腹の裂けるほど食い、隠れて酒を飲み、ぬけ買いをやる、しかもこそこそ御政治の悪口ばかり申す、こんなことでは佐貝の復興なぞ思いもよらん、実になんたる世相であるか」
「要するに人心の腐敗堕落ですな」
矢土真平が慨然として椀の蓋へ酒を注ぎ、ぐっとあおって眼を怒らす、
「これではだめです、まず準法の精神と社会道徳と良心を煥発しなければならない。酒が禁止されたら、うーい、断じて酒を飲まない、これが秩序ですからな、しかるに下民どもは、おい酒がないぞ、――下民どもは禁を犯して飲む、これでは秩序が乱れるのは当然です」
「手ぬるいんだよ」
こう云って池名勘兵衛が鯛の塩焼をつつく、
「もっと絞め上げるんだ、ぎゅうぎゅうとね、下民どもにはその他に手はない」