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さんあくにんものがたり
三悪人物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《三悪人物語(さんあくにんものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 頁
「つかぬことを伺いますが」
と慇懃に声をかけた。相手は反射的に刀へ手をやり、躰をひらいて、
「なに者だ」とわめかれる、その頭を中将が後ろから棍棒で殴った。ごつんというみごとな音がして、蓑賀殿は優しくうめき、前へつんのめって倒れると、さも安堵したような深い溜息をもらして気をうしなわれた。
「今夜の酒は悪くなかった」
権頭と中将が被害者の袴の紐を解きながら云う、
「そだ、あならいっしゃちゃのこだ」
「ほい財布だ、かんかんはずっしりだぜ、嘘あねえ」「きもなよすか」
「いやそれはいけません」
と杢が女のような声を出す、
「やっぱり剥いでゆくほうがいいでしょう、ばか息子の放蕩ですよ」
「ほら始まった、どういうおちなんだそれは」
「つまりですね、裸になれば早く眼が覚める」
「違えねえ、そいつも食いつけらあ」
こうして三人は蓑賀殿を裸に剥き、着物はひと丸めにして、さあずらかれと立ち上がった。が、同時に権頭がおい待てと二人を呼び止めた。
「この財布には百両ちかい金がへえってる、いいか、中将、杢も聞いてくれ、おれ達あなげえことお杉の姐さんの下で稼いだが、もうそろそろ一本立ちになってもいいころだ、大の男が三人で危ねえ橋を渡り、姐さん一人に八割も頭をはねられるんでは埋らねえ、どうだ、このへんで姐さんと手を切ろうじゃねえか」