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さんがつのだいよんにちよう
三月の第四日曜
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《三月の第四日曜(さんがつのだいよんにちよう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 頁
肩のつまるような一日が過ぎると、サイは、いつもよりずっとくたびれて、不機嫌になって家へ帰って来た。
敷居をまたぐと、そこの土間で飯ごとしていた六つの妙子がポツンと、
「お兄ちゃんが来たヨ」
と云った。
「お兄ちゃん?」
「うん」
「勇吉さんが、つい今しがたよったけれど、あんたが帰ってないもんだから、また来るって――」
いつでも来られる人みたいに云う、トミヨの気働きのない言葉がサイの疳にふれた。
「用じゃなかったんでしょうか」
盗られた三足のゴム草履のことやシャボンのことが浮んで、心配になった。
「何とか云ってかなかったでしょうか」
「なんも云っていなかったよ。自転車そこにおっかけて、ちいと話したばっかしで……」
「……でもここがよくわかったこと」
「私もそう思ってね。そしたら、何でも東京じゅうの番地の入った地図売ってるんだってね、それを見て店の使いもするんだってよ」
こっちの方へついでがあったのかしら。日本橋からここまでと云えば、往復で何里になるのだろう。
今時分からもっと暗くなる頃にかけて、表の十二間道路の片側は東京方面からこっちへと帰って来る自転車で、一刻まるでトンボの大群がよせたようになる。