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みうらろうじんむかしばなし

三浦老人昔話

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《三浦老人昔話(みうらろうじんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,637 字 · 224 頁

青空文庫

いずれにしても、雷ぎらいの人間を雷見舞に遣ろうというのですから、躄を火事見舞に遣るようなもので、どうも無理な話です。その無理からこゝに一つの事件が出来したのは、まことによんどころないことでした。

浅草へかゝって、馬道の中ほどまで来ると、雷は又ひとしきり強くなって、なんでも近所へ一二ヵ所も落ちたらしい。雹はやんだが、雨風が烈しいので、駕籠屋も思うように駈けられない。駕籠のなかでは大次郎がふるえ声を出して、早く遣れ、早くやれと急きたてます。いくら急かれても、駕籠屋はいそぐわけには行かない。そのうちに大きい稲妻が又ひかる。大次郎はもう堪らなくなって、一生懸命に怒鳴りました。

「どこでもいゝから、そこらの家へ着けてくれ」

どこでもと云っても、まさか米屋や質屋へかつぎ込むわけにも行かないので、駕籠屋はそこらを見まわすと、五六軒さきに小料理屋の行燈がみえる。駕籠屋は兎もかくもその門口へおろすと、大次郎は待ちかねたように転げ出して、その二階へ駈けあがりました。駕籠に乗った侍が飛び込んで来たのですから、そこの家でも疎略にはあつかいません。女中共もすぐに出て来て、お世辞たら/\で御注文をうけたまわろうとしても、客は真蒼になって座敷のまん中に俯伏していて、しばらくは何にも云いません。