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さんりょうきょう
三稜鏡
佐左木 俊郎
線上閱讀佐左木 俊郎《三稜鏡(さんりょうきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,347 字 · 42 頁
私達はどうしても笠松博士に親しむことが出来なかった。私が幾分でも博士に親しむことの出来るようになったのは、笠松博士の臨床外科医術の研究助手として、博士の邸内にある病院続きの研究室へ通うようになってからであった。それも、博士との直接的な感情ではなく、博士の令嬢を介して初めて感じられる間接的な感情であった。
笠松博士が、自分の研究の助手として、何故特に私を選んだのかは、私に取っては疑問であった。併し、博士は、追々に、私と令嬢とを、結婚させようとしているのらしかった。同時に、博士は、自分の研究を、私に引継がせようとしているのらしかった。それが私には疑問なのであった。その学理的研究に於いてよりも、臨床医術に於いて知られ、魔術師のように、手先の器用な博士が、何故、殊にも手先の不器用な私を選んだのかは、私にはわからなかった。それを善意に解釈するなら、博士は、博士自身の精神的欠陥と頭脳の不透明とを自覚して、自分に欠けている部分を、私によって補おうとしたのらしくも思われた。そして又それを悪意に解釈するなら、博士は、外科医学上の私の新発見を盗んで、それを自分の魔術師の指のように器用な手先で直ちに臨床医術に応用しようとしたらしくも思われた。