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ふこう

不幸

梶井 基次郎

線上閱讀梶井 基次郎《不幸(ふこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,060 字 · 8 頁

青空文庫

東京の高輪の方に位したその屋敷町の往還は常から人通りが少なかったが、風がだんだん吹き募りながら夜に入ってからは人っ子一人通らなかった。

閉め切った雨戸をがたごと鳴らしては、虚空へ舞上ってゆく、気味の悪い風の絶間に、鋭く聞き耳をたてて、昼間から出たまま帰って来ない子供達の足音を待っている母親の心は死ぬ程不安の念にさいなまれていた。――

彼女の二人の子供、十歳になった三郎と、まだ七歳の四郎は、その日昼飯が済んでから、戸外へ遊びに出たまま帰って来ないのであった。

寒い日ではあり、末の四郎がまだジフテリヤの病後なので彼女は早く帰って来るように注意したのではあったが、彼等はなかなか帰って来なかった。

子供が出て行った後、膳の後仕末をして、子供の正月の晴着に手をつけている間に、お八つの時刻が来たが、彼等は帰って来なかった。遊びに気がとられていても、お八つの時には必らず「なにか」を貰いに帰って来る子供が常になく帰って来ないのは、彼女の心に漠とした不安の錘を投げ込んだ。

彼女達の一家が主人の転勤のため、何代も住み続けた大阪から、東京へ移ってそこへ居を構えてからまだ一月も立たずであった。