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ふしぎなるくうかんだんそう
不思議なる空間断層
海野 十三
線上閱讀海野 十三《不思議なる空間断層(ふしぎなるくうかんだんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,651 字 · 30 頁
乃公はそのドーアのハンドルを一つ一つ、眼だけギロリと動かしながら検分してゆくのだ。そのハンドルは皆真鍮色をしているんだったが、五つ目だったか六つ目だったかに、ただ一つピカピカ、金色をしたハンドルがあるのだ、それは確か廊下の左側だったよ。
「金色のハンドル!」
燦然たるハンドルの前までくると、乃公の手はひとりでにそのドーアの方へ伸びてゆくのだった。その黄金のハンドルを握って、グルリとまわして、向うへ押すのだった。無論いつだってそのドーアは向うへやすやすと明いたさ。乃公は吸いこまれるように、その室の中へ入ってゆくのだった。
その部屋は十坪ほどのがらんとした客間だった。真ん中に赤い絨毯が敷いてあってね、その上に水色の卓子と椅子とのワン・セットが載っているのだ。卓子の上にはスペイン風のグリーンの花瓶が一つ、そして中にはきまって淡紅色のカーネーションが活けてあった。
この部屋はたいへん風変りな作りだった。それが乃公の気に入っていたわけだが、奥の方の壁に大きな鏡が嵌めこんであったのだ。それは髪床の鏡よりももっと大きく、天井から床にまで達する大姿見で、幅も二間ほどあり、その欄間には凝った重い織物で出来ている幅の狭いカーテンが左右に走っていた。