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ふしぎなとり

不思議な鳥

小川 未明

線上閱讀小川 未明《不思議な鳥(ふしぎなとり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,797 字 · 16 頁

青空文庫

北国の暗い空も、一皮剥たように明るくなった。春雨がシトシトと降る時節となった。海棠の花は艶ぽく綻び、八重桜の蕾も柔かに朱を差す。空には白い綿のような雲が低く、花の村を接吻するように穏やかに通った。私は、この時、小鳥を庭に持って来て、花の見える所に置いた。又、雨霽りのした朝は、紅の蕾から雫の垂れる下枝に懸けてやった。思いなしか、この時分から黒い鳥の胸毛が漸々薄紅になりかかった。

小鳥は籠の中から、この春の麗かな景色を眺めていた。頭を傾げて、身の自由にならぬを怨んで梢に来て暗く他の鳥を見て、羨むように見えた。

この鳥を逃してやろうか知らん。と、幾度思った時があったか知れない。けれど又何となくこの鳥を失してしまうのが惜かった。逃してしまえば、もう二度と帰って来ない、逃すなら、何時でも逃すことが出来るのだ。今日は逃さずに置こうと思い止った。

或年、祖母が死んだ。その時、親類の者共が寄り集った。その中で婆さん達が、この鳥を逃してやれといった。その時、私は鳥籠の前に立って、熟々と鳥を見詰て考えた。もうこの鳥が来てから三年になる。何時の間にやら黒い鳥が変って、胸毛は茜色に薄紅くなった。